バスの旅

9日目 : 今日は念願のアオラキ/マウント・クック国立公園に向かう日です。クライストチャーチの中心部が地震被害で使えないため、バスターミナルも街の北部ビーリー・アベニューで仮営業しています。昨日試しに歩いてみたら、手ぶらでも宿から20分ほどかかりました。重い荷物を持っては歩きたくないと、今朝はタクシーを呼びました。

 他にもバス停に向かう人がいたのでタクシー代を割り勘、半額の5NZ$(約350円)で済みました、ありがたい。降ろされた場所には看板とコンテナハウスがポツンとあるだけです。近寄ってみるとそこにはワンちゃんとで遊んでいる人の姿がありました。

コンテナ
コンテナ営業所
遊び好きのワンちゃん
遊び好きのワンちゃん

 楽しそうなその様子に最初飼い犬と主人かと思っていましたが、そのうちワンちゃんは私の所にボールを持ってきて座り込みました。「この犬は遊んで欲しいみたいですよ」と言って来た人を良く見たら、アジアからの旅行者のようでした。結局、居合わせた観光客が交代でワンちゃんの相手をして発車までの時を過ごしました。

 クィーンズタウン行きのこの路線には日本人のガイドさんが同乗してくれます。バスが発車すると簡単な自己紹介をしながら車内を回り、日本人乗客にヘッドホンを配ってくれました。ニュージーランドの長距離バスは運転手さんが沿線の説明をしながら走りますが、それを彼女が翻訳して聞かせてくれると言うわけです。 

クウィーンズタウン行きのバス
クウィーンズタウン行きのバス

 今日のドライバーは、ほっそりタイプのトムさん。クッキー工場の横を通過中はクッキーのコメント、ニュージーランドで一番長い橋を渡る時はその長さや川岸に見えている黄色い花の説明、とトムさんが話し出すとすかさずガイドさんが日本語で解説してくれます。

 「今走っている1号線は150km以上直線が続き運転手泣かせなんです」とか、「オーストラリアから入れられたポッサムが繁殖しすぎて今は害獣になっています。オーストラリアでは保護獣のため毛皮の利用はできませんが、NZではその毛皮製品が手に入りますよ」とか、興味深い話が続くのでとても寝てはいられません。

レイク・テカポ
レイク・テカポ

 途中コーヒーブレイク休憩を挟み、直線が続いた1号線から山岳部に向かう8号線に入りました。右側に景色が開けるポイントがあり、乗客が身を乗り出してシャッターを切ってましたが、私は左側の座席だったため写真が撮れませんでした。マウント・クックが見えるのも右側ですから、この路線では右側の席をお勧めします。

 やがて前方に湖面が見えてきました。テカポ湖です。ここで20分ほどの撮影休憩がありました。湖畔にはルピナスが咲いていて、カラフルなその花とターコイズブルーの湖水、そして遠景の白い山並み、サザンアルプスとのコントラストがそれはそれは美しい。あーでもないこーでもない、と撮影にかなり時間がかかってしまいました。周囲を見ると同乗者はすでに教会のほうに移動しかけています。時間がなくなってしまう、とあわてて後を追いかけました。

善き羊飼いの教会
善き羊飼いの教会

 テカポ湖畔の小高い丘の上に建つ石造りの教会は、ヘンデルとグレーテルのお菓子の家のような可愛らしさです。これから結婚式を挙げるのか化粧直しをしている花嫁さんや関係者の動きがあり、入り口付近はかなりざわついています。

善き羊飼いの教会
善き羊飼いの教会

 でも、ひんやりと薄暗い室内は全くの別世界。暗さの中の唯一の光は、祭壇の向こうに広がる湖とサザンアルプスの眺めです。通俗な言葉で言えばまさに絵画、と言うよりそれ以上。神が創り賜いしもの、と思わず手を合わせたくなってしまいます。

湖越しに見るマウント・クック
湖越しに見るマウント・クック

 テカポ湖を出て30分もたったでしょうか、トムさんが突然「マウント・クックが見える!」と興奮した声で叫び車内が騒然とし始めました。ガイドさんによると「こんなに遠くからマウント・クックの山頂が見られるなんて、本当に珍しいことです。皆さんラッキーですね」とのこと。「ヤッター!」。

前方に迫るマウント・クック
前方に迫るマウント・クック

 
 最初湖の向こうに小さく見えていたマウント・クックの姿が、バスがカーブを曲がるたびに徐々に大きくなってきます。麓にあたる、アオラキ/マウント・クック村まで入ってしまいますと、周囲の丘や山に遮られて山容の一部しか見えないことが多いですから、全容が見られるこのアプローチは貴重です。

 13:00、アオラキ/マウント・クック・ビレッジの入り口にあるマウント・クックYHAに到着しました。ビジター・センターやホテルが建ち、トレッキングコースの拠点ともなっている村の中心部まで、ここから徒歩で10分ほどかかります。

マウント・クックYHA
マウント・クックYHA

パイプベッドが並ぶ8人部屋
パイプベッドが並ぶ8人部屋

 山小屋風の内部はやや天井は低いものの、リビング・食堂・台所のどれもが清潔で暖かい雰囲気です。このユースではシングルルームがなかったので、泊まったのはこちらの8人部屋(1泊36NZ$なので約2500円)。 日本のユースで相部屋の経験はありましたから、余り心配はしていませんでしたがそれは、作り付けのがっしりとした2段ベッドで、片側には小物を置く棚と照明があり、カーテンも付いていてある程度のプライバシーが守られる、ところだったからだと後で思い知らされました。

 パイプの2段ベッドは、少し動くだけでギシギシときしみ音をたてます。初日は上段が不在だったのでさほどの被害はなかったのですが、2日目に大柄のヨーロッパの若者が寝ることになったらもうアウト。もし次回ここを訪問することがあったら、別のホテルを選ぶことにしましょう。

                                                                                                                                 

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